2009年8月30日日曜日

保科アカデミー室内管弦楽団 を聴く

久しぶりに すみだトリフォニーホール で心に残るコンサートを聴いた。

  

ホールは敷地が限られた複合ビルの中にあって、導線が芸術味に欠けるけれど雰囲気を出すための、ちょっとした工夫があちこちに。

  

  

玄関口もいたって控え目。右はNHK交響楽団で長らく活躍された千葉馨が所有していたワーグナーチューバ。貸し出ししてもらえるようだ。

2Fバルコニー席がステージに向けて大胆に傾斜しており、その下の壁面までが斜めっていて、初めて観た時は随分と違和感を感じたものだ。最近は慣れてきて、建築家のダイナミックさを求めたアイデアがわかるようになってきた。 そのバルコニー席前方で聴いた。 ステージサイドからオーケストラ全体を俯瞰できる席で聴くのが好きだ。


で、  この演奏会の素晴らしさについて

保科アカデミー室内管弦楽団  岡山大学交響楽団 のOBオーケストラといえる存在。
この岡山大学交響楽団を40年以上にわたって指導・指揮しているのが 作曲家 保科 洋氏 。

学生オーケストラゆえ、メンバーはどんどん入れ替わるわけだけれども、東京芸術大学出身で吹奏楽の世界では著名な作曲家である保科氏の音楽作りが脈々と受け継がれている。その岡山大学オーケストラOBが集う 保科アカデミー室内管弦楽団 にも楽曲分析と演奏解釈について熱く語る保科イズムがしっかり根付いていることが感じられた。こうした長年の関係が継続できているのは OKAYAMA という土地柄なのかもしれない。 大都会で活動するアマチュアオーケストラではいろんなことがごった煮状態になってしまうものだ。

♪ 開演時間5分前からステージに演奏者が三々五々、登場するAmerican Style だった。これのリスクはステージ上で音だししている人の音色からOrchestraの実力が垣間見えてしまうこと。でも、どなたも音色が美しくて、それから始まる演奏を期待させた。

♪ 演奏曲は、保科氏の作品と「悲愴」。その演奏から感じたのは 音楽の流れの中にある「間」(アンサンブルの呼吸)、ふと訪ずれる無音の瞬間の「間」 がオーケストラ全体で共有されていること。

♪ 前半は色彩感に溢れる保科洋作品を2曲、秋山隆氏の指揮で演奏された。演奏のあとで作曲家・保科氏がステージ上に呼ばれたのだけれど、軽装で軽やかな足取りでステップを駆け上がってくる姿にビックリ。S11年生まれとはとても思えない。若い人たちと活動されているゆえか。

♪ 「悲愴」が作曲技法的に工夫に満ちた名曲であることを教えてくれる精緻な演奏だった。fff であってもけっしてmaxを振りきることなく音色をコントロール出来ているのは、若いメンバー中心だけに驚きだった。 終楽章終盤に3Trombone+Tuba で演奏される10小節間(mp~ppppp)は心に染みた。 そのあと、低弦vc+cbに3連符がスラー繋がりで20小節間も続くのだけれども見事なアンサンブルだった。

♪ Orchestra の中で弾くときに迷うのは全体に奉仕することと自分を表現することのバランス。そんなことを考えさせてもらえるいい演奏だった。Berliner Philharmonic のような奔放さが加わると凄いだろうな。


1 件のコメント:

保科アカデミー室内管弦楽団 さんのコメント...

保科アカデミー室内管弦楽団です。29日はご来場、誠にありがとうございました。また、当団の演奏をお気に召していただいたとのこと、とても嬉しく記事を拝見致しました。
事後報告になってしまい恐縮ですが、この記事へのリンクをこちらに張らせて頂きました。もし不都合がございましたらこちらよりご連絡頂ければ幸いです。宜しくお願いします。