2009年10月3日土曜日

音楽の愉しみ ~村上春樹エッセイを読んで~


『クラシック音楽を聴く喜びのひとつは、自分なりのいくつかの名曲を持ち、自分なりの何人かの名演奏家を持つことにあるのではないだろうか。それは場合によっては、世間の評価とは合致しないかもしれない。でもそのような「自分だけの引き出し」を持つことによって、その人の音楽世界は独自の広がりを持ち、深みを持っていくようになるはずだ。・・・・(*)・・・・ 。そのような個人的体験は、それなりに貴重な温かい記憶となって、僕の心の中に残っている。あなたの心の中にも、それに類したものは少なからずあるはずだ。僕らは結局のところ、血肉ある個人的記憶を燃料として、世界を生きている。もし記憶のぬくもりというものがなかったら、太陽系第三惑星上における我々の人生はおそらく、耐えがたいまでに寒々しいものになっているはずだ。だからこそおそらく僕らは恋をするのだし、ときとして、まるで恋をするように音楽を聴くのだ。』

ここで村上春樹が個人的体験として熱く語っているのが Schubert Piano Sonata No.12 in D major という名曲選にはけっして載っていない曲。

なんと自宅にこの曲の15種類!の録音を持っているという。そして、自分が愛する名演奏として挙げているのが、ユージン・イストミン、ヴァルター・クリーン、クリフォード・カーゾン、レイフ・オヴェ・アンスネスというメジャー級ではないピアニストたちの録音。

これまで音楽評論というと、吉田秀和氏の著作によって音楽を深く聴くことの大切さを教わっていたけれど、村上春樹の言う「まるで恋をするように音楽を聴くのだ」という言葉に、「そうだ!自分にとって音楽ってそういうものだった。」という感動の記憶を呼び覚ましてくれた。

まだRecord Playerも健在

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